
コロナ禍という大きな転換期を経て、多くの企業でテレワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークが定着しました。そうした中、現在では改めて「対面で集まり、共に働く場所」としてのオフィスの価値が見直され、出社回帰の流れも広がっています。画面越しでは得られない、偶発的な対話や一体感を醸成する拠点として、オフィスのあり方を再定義する動きが活発になっているのです。
この変化にともない、オフィス環境は単なる作業の場としてだけでなく、企業ブランディングの要素の一つとなっています。特に、学生をはじめとする求職者は、企業の労働条件やWebサイトに並ぶ言葉だけでなく、実際の職場環境をよく見ています。ワークスペースだけでなく、休憩室や食堂といったリフレッシュスペースにも高い関心を寄せているのです。
快適で充実したリフレッシュ空間の存在は、求職者にとって「この企業は従業員の健康や働きやすさをどれだけ大切に考えているか」を知ることができる、具体的かつ有益な材料となります。働く人のウェルビーイング(心身の健康と幸福)に配慮されたオフィス環境は、企業の誠実な姿勢の表れとして受け止められ、今や優秀な人材を惹きつけ、会社選びの決定打となる重要な要素の一つになっています。
なぜ、食堂・休憩室をリニューアルすべきなのか?

オフィス全体の面積を見渡したとき、意外なほど有効活用されていない空間があります。
それが「食堂」や「休憩室」です。
食堂・休憩室は、従業員がリラックスをするために大切な場所ですが、多くの企業では、昼時の1〜2時間ほどしか人が集まらず、それ以外の時間帯は使われないままになっているケースが少なくありません。時間あたりの稼働率やオフィスに支払う賃料という観点から見ても、これほど広いスペースが1日の大半で使われていない状態は、実質的な「デッドスペース(有効活用されていない空間)」になってしまっています。
「食堂・休憩室」を一日中機能する「多目的空間」へと役割を再定義する

これまで昼時しか活用されていなかった食堂や休憩室の役割そのものを、「勤務時間を通じて常に稼働する多目的空間」へと定義し直す企業が増えています。
ランチタイム以外の時間を有効に活用することで、単なる休憩場所としてだけではなく、以下のような新しい価値を生む拠点へと変える動きが注目されています。
- ・社内コミュニケーションを促す場所として活用する
午後の時間帯にカジュアルなミーティングや、ちょっとした個人ワークができるスペースとして開放します。部署の垣根を超えたメンバーが自然と行き交うことで、業務の合間にライトな相談やアイデア交換ができる、社内の交流の場として機能し始めます。
- ・企業のブランド力を社外・学外へ発信する場所として活用する
インターンシップの学生や求職者、あるいは来客をお迎えするエリアとして活用します。開放的で活気のある空間を実際に目にしていただくことで、企業の文化や「働く人を大切にする姿勢」を直感的に伝える、ブランディングの象徴となります。
食堂・休憩室のリニューアルを成功に導くためには

まずコンセプトから設計する
リニューアルと聞くと、どうしても「おしゃれな家具を入れる」「綺麗な壁紙に変える」といった見た目の変化に目が向きがちです。しかし、しっかりと機能する空間にするために多くの企業がまず着手しているのは、コンセプトの設計です。
まずは「自社の社員に、ここでどんな時間を過ごしてほしいか」という軸を明確に定めます。例えば、「ひとりで静かに頭を休めるリラックス空間にしたい」「社員同士の活発な対話が生まれる空間にしたい」、あるいは「エリアごとにその両方の機能を切り分けた(ゾーニングされた)空間にしたい」など、企業によって食堂・休憩室に求める役割はそれぞれ異なります。一貫したコンセプトの軸を持つことで、リニューアルによって社員の願いや経営層の想いがしっかりと反映されたオフィスが実現します。
時間帯によって役割を変える「多目的性」を意識する
食堂・休憩室の稼働率を最大限に高めるために、1日の中で時間帯ごとに役割を変える工夫も広く取り入れられています。
Wi-Fiや電源の完備はもちろんのこと、動かしやすい可動式の家具を導入するのが効果的です。例えば、昼は「食堂」として使い、午後は「個人ワークやセミナーの場所」に変え、夜は「社内懇親会の会場」にするなど、時間帯によって空間の役割を変える多目的性を持たせることで、限られたオフィススペースを無駄なくフル活用することができます。
社員が気兼ねなく利用できる空気感をどう作るか
どれほどハード面(設備)を素晴らしく整えたとしても、「本当に使っていいのだろうか」と社員が躊躇してしまう環境では意味がありません。利用の心理的ハードルを下げるためのソフト面の運用こそが、実は最大の成功の鍵となります。
まずは経営層やリーダー陣が率先して空間を活用することが大切です。社内イベントや少人数のミーティングなどで積極的に活用することで、社内全体に「いつでも自由に、気兼ねなく使っていいんだ」という空気感が生まれ、自然と利用率を高めることができます。
まとめ
オフィス投資において、食堂や休憩室のリニューアルは非常に効果的です。 以下の3点を意識したリニューアルプロジェクトを推進することで、リニューアルの効果を最大化することができます。
- ・企業のブランドや成果に直結する「コンセプトと方針」を最初に作り込む
- ・社員が自然と足を運びたくなる「多目的性」を持たせる
- ・経営層も率先して活用し、誰もが気兼ねなく集まれる「空気感」を作る
これにより、今まで食事や休憩にしか使われていなかったスペースを、コミュニケーションの活性化による生産性向上と、ブランド強化による採用力向上に繋がる空間へと変えることができます。
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